方法6
愛情が身長を伸ばす


食事、運動、睡眠のバランス+愛情
特に大切な母の愛
愛情遮断性低身長症
被虐待児症候群
両親の離婚、再婚が身長増加に影響を与えた例
家庭では、のびのびとリラックスできていますか?
過度のストレスは身長増加を妨げる
のびのび過ごすと成長ホルモンの分泌も良くなる




愛情が身長を伸ばす 

いくら睡眠、栄養、運動のバランスがとれていても、愛情がないと身長は伸びません。ビタミンI(愛)がいちばん大切なのです。

 

◆食事、運動、睡眠のバランス+愛情

 「身長を伸ばすのに、いちばん大切なものは何ですか?」との質問を受けることがあります。

 その答えは、やはり愛情でしょう。食事、運動、睡眠に問題がなくても、愛情がなければ子どもは育ちません。

 精神状態が不安定になると、子どもの身長の伸びは悪くなります。身長の増加には、情緒の安定が大切なのです。不思議なことに、愛情不足や情緒の不安定によって脳下垂体から分泌される成長ホルモンの量が減ってしまいます。

 成長ホルモンがつくられる脳下垂体は脳の一部ですから、精神状態の影響を受けてしまうのです。また、情緒が不安定だと食欲がなくなったり、睡眠が浅くなったりしますので、これらの影響も加わって身長の伸びが悪くなります。

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ビタミンI()がいちばん大切 

栄養、睡眠、運動は、子どもの身長増加に欠かせませんが、
これらだけでは身長は伸びません。
子どもの発育にとってもっとも重要なのは愛情です。





◆特に大切な母の愛

 身長増加のためには、母親の愛情は特に大切です。親の愛情が奪われたために身長が伸びなくなった状態を、愛情遮断症候群といいますが、別名母性剥奪症候群といいます。

 阪神大震災では、不幸にして親を亡くした子どもたちが数多くいますが、母親を亡くしたお子さんの身長の伸びは、特に悪かったようです。

 母の愛情がいくら大切でも、母も、一途に子どもに愛情を注ぎ込むだけでは、いつか心の空しさを感じるものです。

 夫は妻と子に愛情を注ぎ、妻は夫と子に愛情を注ぐ。夫婦の愛の絆があってはじめて、母は愛情をもって子育てができるのです。

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◆愛情遮断性低身長症

 身体発育は、自然環境、社会環境、家庭環境などの影響を受けますが、低年齢児では、特に家庭環境の影響を大きく受けます。

 親子間、特に母親と子どもの間の安定した愛情に満ちた関係は、子どもの成長には欠かせないものです。この関係が崩れますと、子どもの身長増加は損なわれます。

 このように、子どもとして当然受けるべき愛情を絶たれた結果、身長増加が停滞し、低身長となったものを、愛情遮断性低身長症と呼びます。

 次のような話がドイツであったそうです。

 ある一卵性の双子の姉妹のお話です。二人ともやさしいお母さんのもとで幸せに暮らしていたのですが、なにかの理由で、両親から離れて暮らすことになりました。

 二人は別々の修道院に預けられたのです。

 一人はやさしい愛情深い尼僧に、一人は意地悪な尼僧に育てられました。別れ別れになった時、二人の身長はほぼ同じでした。しかし、数年後に再会した時、二人の身長はまったく違っていたのです。

 やさしい尼僧に育てられた子に比べて、意地悪な尼僧に育てられた子の身長の増加は、とても悪かったのです。





 

◆被虐待児症候群

 子どもの身長増加には、親の愛情が大きな役割を果たしています。しかし、時として、愛情を与えてくれるはずの親から虐待を受けている子どもたちがいます。わが国では比較的すくないのですが、アメリカなどでは社会問題化しています。

 虐待とは、必ずしも暴力だけではなく、保護の拒否(子どもを無視、食事を与えないなど)もあります。

 このような場合、もはや親から離すしかありません。入院して、やさしい看護婦さんと過ごし始めると、成長ホルモンの分泌が回復してくる場合もあるようです。右の図は、Skuseらが報告した例です。

                  


◆両親の離婚、再婚が身長増加に影響を与えた例

●成長曲線が物語るもの

F君は、四歳の時に両親が離婚し、父と祖母との三人で暮らしていました。食事は祖母が作り、特に食欲が低下したわけではありませんが、母と別れてから身長増加が悪くなっていきました。母を失い、眠れぬ夜を過ごしたF君の幼い姿が思い浮かべられるような成長曲線です。六歳ころからは、父と祖母との三人の生活にも慣れ、F君は明るさを取り戻し、そのころから身長の増加もよくなってきました。

 しかし八才の時、父が再婚。F君はたいへんショックを受け、再婚当初、新しいお母さんとの関係がうまくいきませんでした。この時期、身長増加が少し悪くなっています。

 その後しだいに継母の愛情が伝わるようになり、新しいお母さんにすっかりなついていきました。それにともない、身長増加もしだいに改善していきました。

 

                  

◆家庭では、のびのびとリラックスできていますか?

 この本では、身長を伸ばすための方法を理論的に延べていますが、食事にせよ運動にせよ、理屈ではなく、楽しいものでなければなりません。お母さんがあまりに理屈っぽくなると、母児関係の緊張感が強まり、子どもはストレスを感じます。

特に食事は、いくら栄養的に優れていてもおいしくなければ食べられません。またお母さんがガミガミいっていては食欲も減退してしまいます。

 料理の工夫も大切ですが、楽しくおいしく食べることのほうがはるかに大切ですので、少々無駄があっても、子どもがのびのびニコニコ生活できるように工夫しましょう。

 たとえてみるなら、音楽はたとえ楽譜が複雑で演奏技巧が高度であっても、聴いて楽しくなければ、良い音楽といえないのと似ています。

 

■身長増加は子どもの健康のバロメータ

 身長増加は子どもの健康のバロメータです。学期末に成績表を手にしたら、勉強の成績だけではなく、身長測定の欄にも目を向けてください。そして、年間身長増加率を計算してみてください。

 伸びが悪かった年は、もしかして夫婦げんかばかりしていませんでしたか。学校でいじめられていませんでしたか。もちろん、ホルモンの病気や内臓の病気の早期発見にも役立ちます。

 

◆過度のストレスは身長増加を妨げる

 ホルモンには、夜型と朝型があります。成長ホルモンは、夜間睡眠時に主として分泌されます。反対に、朝型の代表がコルチゾール(副腎皮質ホルモン)です。このホルモンは、あたかも成長ホルモンの分泌と入れ替わるように、早朝から分泌が上昇し、起床時にはピークを迎えます。

 成長ホルモンは、各種の栄養素をからだに取り込み、骨や筋肉をつくります。つまり栄養の貯金をしてくれるのです。これに対してコルチゾールは、少々貯金をはたいてでも、ストレスに対処する役割を担っています。ストレスのない生活はあり得ませんから、このホルモンは生命を守るために非常に重大なはたらきをしてくれているのです。

 しかし、ストレスが強すぎると、必要以上にコルチゾールが分泌され、貯金をどんどん使ってしまうのです。つまり、食べたものが身につかないのです。

 日中、学校での生活はストレスに満ちたものかもしれませんが、せめて家庭ではリラックスさせてあげたいものです。

 とくに、本来あまり分泌されるべきではない夜間には、徐々にコルチゾールの分泌が減少し、成長ホルモンの分泌にタッチ交代できるように、就寝前の時間には、楽しい話でもして、ニコニコしながら眠りにつけるようにしてあげましょう。


成長ホルモンの分泌と比べると、ちょうど逆のパターンになっています。

■コルチゾールは、成長ホルモンの敵

 体内には、いろいろな種類のホルモンがありますが、身長を伸ばすのにもっとも大切なのは、成長ホルモンです。

 甲状腺ホルモンや性ホルモンも身長を伸ばすためには大切です。甲状腺ホルモンや性ホルモンは、成長ホルモンの味方なのです。

 これとは逆に、副腎から分泌されるコルチゾールは、成長ホルモンの宿敵で、このホルモンが過度に分泌されると、身長増加が妨げられます。

 過度のストレスは、このホルモンの分泌を促しますので、身長増加を妨げる可能性があります。

 

 

◆のびのび過ごすと成長ホルモンの分泌も良くなる

 下の図は、岩城淳子先生がお子さんの尿中成長ホルモンを春休み後半から新学期にかけて測定された結果です。

 春休み中には尿中成長ホルモンは50ピコグラム/ミリグラム・クレアチニン以上でしたが、新学期が始まるとしだいに低下していっているのがわかります。

 一学期はクラス替えがあり、担任の先生も替わるため、特にストレスも強く、成長ホルモンの分泌も悪くなる場合もあるようです。

 

●毎日ニコニコ過ごしていますか?

 ニコニコしているのはテレビを見ている時だけ、というようなことはありませんか。

 思春期になると悩みも多く、毎日ニコニコとはいかないでしょうが、少なくとも小学校低学年までの子どもは、毎日楽しくてニコニコして暮らすのが本来の姿ではないでしょうか。








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