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肥満児は、小学生のうちは身長も高いのですが、中学になると伸び悩みます。
肥満を防ぎ身長を伸ばす方法は。アレルギー疾患がある場合どうするか。
夜尿は身長増加を邪魔するかを述べます。
- 大きく生んで、大きく育てよう
- 健康な体が身長を伸ばす
- 幼児期から、良い生活習慣を
- アトピー性皮膚炎が身長増加を妨げることもある
- 扁桃腺肥大やアデノイド
- 気管支喘息
- 気管支喘息のくすりの成長への影響
- 肥満度を知っておこう
- 標準体重の簡単な出し方
- 肥満を治す基本は、この5つ
- ジュースは飲んでも太るだけ身長は1mmも伸びない
- ジャンクフードはほどほどに
- 夜尿の治し方
- 自宅でできる夜尿を治すトレーニング
- 食物アレルギーの子はどうするか
1. 大きく生んで、大きく育てよう
小さく生んで、大きく育てるという言葉がありますが、やはり、大きく生んだ方が有利です。
大きく生むためには、次のような事に注意しましょう。
(1)出生前の母親の栄養不良
妊娠中は、栄養摂取は、特に注意が必要です。
食べ過ぎは、良くありませんが、当然、栄養不足も胎児の発育に悪影響がでます。
さらに、母親の過去の栄養状態も、たとえ妊娠中の栄養摂取が適切であっても、
胎盤の機能や胎児の栄養状態に悪影響を与える可能性があります。
たとえば、妊娠前に極端なダイエットをしていて栄養不良状態になっていると、
胎児の発育に悪影響がでる可能性があるのです。
(2)妊婦の飲酒
ある程度の飲酒は、かまいませんが、飲み過ぎは非常に危険です。
アルコール中毒の妊婦の胎児は小さく、また、他の障害がみられることもあります。
(3)妊婦の運動
妊娠中、特に初めの6〜7ヶ月間、中程度以下の穏やかな身体活動は、
胎児の発育に対して、明らかな影響はありません。
しかし、妊娠中、長期間にわたり激しい運動を行うと、胎児の発育が阻害される可能性があります。
(4)妊婦の喫煙
妊娠期間中にタバコを吸えば吸うほど、胎児の発育は悪くなります。
これは、喫煙により子宮内が酸素不足になるためと考えられています。
妊娠中の喫煙が、子どもの発育に及ぼした結果は出生後も残り、
こうした子どもは出生後も体が小さいという報告があります。
(5)騒音に注意
妊娠中は、あまり騒音の激しいところで暮らすのは、良くないようです。
胎児の発育に悪影響が出るとの報告があります。
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身長を伸ばすためには、十分な睡眠、適度な運動そして偏りのない栄養が大切です。
これは、健康な体があって、はじめて可能なことです。
病気をしますと、運動はできず、食欲はおち、睡眠も妨げられます。
アトピー性皮ふ炎のかゆみのためや、気管支喘息のせきのため、夜ねむれないことがよくあります。
扁桃肥大(へんとうせん)やアデノイドも不眠や食欲不振の原因になります。
夜尿のため、夜中に起こされ、睡眠が分断され、身長が伸び悩んでいるお子さんもいます。
便秘は、ささいなことと、とらえられがちですが、治すと食欲がずっとよくなります。
肥満については、この本では、何度もくりかえしましたが、なんとか治したいものです。
また、百日咳、はしか、おたふくかぜなどのように、
ワクチンで予防可能な病気は、ワクチン接種を早めにうけましょう。
3.![]()
幼児期に形成された良い生活習慣は、その子にとって、一生の宝となり、
身長増加の上でも大変役に立つでしょう。
逆に、いったん悪い生活習慣が形成されてしまうと、
そこから抜け出すのは容易なことではありません。
- 偏食はしません
- 早寝・早起き
- 朝食はちゃんと食べます
- テレビとファミコンは
2時間までにします幼稚園児の時期は、生活習慣が形成される重要な時期です。
誤った生活習慣が形成されてしまうと、
その子の一生に影響が及びます。
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アトピー性皮膚炎による、かゆみが激しいと、身長増加が悪くなることがあります。
かゆみのため睡眠が妨げられ 成長ホルモンの分泌が低下したり、
昼間眠くて食欲も低下するためと考えられます。
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、皮膚を清潔に保つことと、
身の回りの環境のホコリやダニを減らすことです。
しかし、それだけでかゆみがよくならないことが多く、
ぬり薬や飲み薬が必要となります。
飲み薬で最初に試すのは、抗ヒスタミン剤のぺリアクチンが良いでしょう。
この薬はかゆみを押さえます。眠くなるのが副作用ですので、朝内服するのには適しませんが、
夜内服すると、かゆみで眠れないお子さんにはちょうど良いでしょう。
ぬり薬では、ステロイド剤が有効ですが、この薬を上手に使うには、
なるべく弱めのものを薄めにぬり、良くなれば早めに中止することです。
ステロイド剤の副作用を恐れるあまり、どんどん症状が悪化してしまい、
結局、強いステロイドを長期間使うという状態に陥らないよう注意が必要です。
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扁桃肥大やアデノイド増殖症があると、食べ物がのどを通りにくかったり、
鼻づまりで夜寝苦しかったりで、身長の伸びが悪くなったりする場合があります。
このような場合、耳鼻科の先生に手術(扁桃切除やアデノイド切除)してもらうと、
身長増加が改善することもあります。
東京慈恵医大耳鼻科学教室の千葉伸太郎先生らは、
小児の扁桃肥大による睡眠呼吸障害が成長ホルモン分泌に与える影響を研究されています。
扁桃肥大のため、睡眠が妨げられている症例で、手術により扁桃を取ったところ、
睡眠時の成長ホルモン分泌が改善したと報告されています。
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気管支喘息に悩まされているお子さんのなかには、
身長が低く、“背が低いのは、喘息のせいかしら?”と
心配されているお母さんもいらっしゃることでしょう。
私の経験では、気管支喘息のために、身長が伸び悩むケースは、
ごく一部の重症のお子さんに限られると思います。
重症の気管支喘息のため、何日も食事が十分にとれなかったり、睡眠が妨げられる場合です。
“喘息のクスリを何年も続けているが大丈夫か?”との質問をよく受けます。
長期に及ぶステロイド剤の内服は、身長増加に、悪影響を及ぼします。
ステロイド剤の吸入については、たぶん、大丈夫でしょう。
しかし、最近さかんに行われるようになった方法なので、
今現在、治療を受けている子どもたちが、成人に達するまでは、最終結論は得られません。
それ以外のクスリについては、古くから用いられていますし、身長増加に直接的な悪影響はないようです。
気を付けていただきたいことは、クスリの副作用を心配しすぎて、
処方された通りに内服せず、結果的に、気管支喘息が悪化し、
そのために、身長の伸びが悪くなっているケースもあるということです。
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くすりの名前 身長増加への影響は? テオドール よく用いられるくすり。
飲みはじめには、一時的に成長ホルモン分泌を少し低下させるが、身長への悪影響はない。気管支拡張剤 直接的な影響はないと思われる。 インタール 身長への影響はない。良いくすり。予防効果が主で、
今起こっている発作を止める効果はない。ステロイド吸入 吸入しても血中にはほとんど入らないため、身長への悪影響は多分ないだろう。
しかし、悪影響ありとの報告もあるので、軽症のぜんそく患児には用いない。ステロイド内服 身長への悪影響があるので、長期の内服は避けたい。
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まずは、肥満度を計算してみよう。
30%を超えていたら大変です。
30%以下に戻すには、大変な努力が必要です。
肥満度は、次の式で計算します。
+50%以上 : 高度肥満 +30〜50% : 中等度肥満 +20〜30% : 軽度肥満 +10〜20% : 太りぎみ
なお、標準体重は、いろんな出し方があります。次のページに1例を示します。
(成人は、身長(m)×身長(m)×22=理想体重)
お子さんの体重−標準体重 肥満度 =
×100 標準体重
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市立伊丹病院の徳永勝人先生は、欠席日数の少ない小学生が健康な小学生であるとの観点から、
最も欠席日数のすくない子どものローレル指数(体重÷身長の3乗)が約13になることに着目し、
次のような標準体重の出し方を提案されています。
ただしこの式は5歳以下の幼児や成人には適用できません。
小児標準体重(kg)=身長(m)の3乗×13
たとえば、身長120cmのお子さんの標準体重は、
1.2×1.2×1.2×13=22.5kgとなります。
このお子さんの実際の体重が29kgあったとすると、肥満度は、
(29−22.5)÷22.5×100≒29(%)
となります。
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とりあえず、次の5つは、すぐに実行しましょう。
これでも、肥満し続ける時は、いったい何カロリーたべているのか、
1日の総カロリーを栄養士さんに計算してもらいましょう。
(1)体重のグラフ
1日4回体重を計り、これをグラフにします。
数字の記録だけではダメです。必ずグラフにして視覚に訴えることが大切です。
自分の体重に意識を向けるためになるべく1日4回測定してください。
思春期の女子ではこれだけで肥満度低下に成功することもあります。
(2)よく噛んで食べる
少なくとも20回以上噛んで食べます。
(3)食後の後かたづけ
食べた後、ゴロンと寝ころんではいけません。
お母さんのお手伝いをして食器洗いをしましょう。
(4)清涼飲料水の禁止
ジュース類にはお砂糖がいっぱい入っています。
牛乳は低脂肪のものにし、500ml以上は飲まないようにしましょう。
(5)ジャンクフードは、ほどほどに(後述)
ジュースは飲んでも太るだけ身長は1mmも伸びない
ジュースや清涼飲料水にはお砂糖が大量に入っている果汁100%ならヘルシーと勘違いしている人もいますが、
果糖は自然で健康に良いというのは誤りです。
砂糖だってサトウキビからとれる自然の恵みですが、とりすぎは危険です。
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ジュースや清涼飲料水にはお砂糖が大量に入っている。
果汁100%ならヘルシーと勘違いしている人もいますが、
果糖は自然で健康に良いというのは誤りです。砂糖だってサトウキビからとれる自然の恵みですが、とりすぎは危険です。
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12.![]()
カロリーの適正化のために、まず主食以外の不要な食べ物をやめることです。
カロリーが高く、太りやすい食品は最小限にしましょう。
どうしても食べたいときは、その分だけ主食のご飯を減らしましょう。
ショートケーキを1個食べた日は、ご飯を1.6杯減らして調節しましょう。
ご飯が減らせないときは、いつもより1時間半も多めに歩く必要があります。
ジョギングなら30分に相当します。
アメリカでは、スナック菓子、ファーストフードやインスタント食品のことを、ジャンクフードといいます。
ジャンクとは、がらくた、ごみ、安物といった意味です。
大切なお子さんにそんなものは、なるべく食べさせないようにしてください。
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テレビを見ていると、インスタント食品、スナック菓子やジュースなどのコマーシャルも多く、これも有害です。
お母さんが、せっかく料理を作っても、テレビでみたインスタント食品の方が魅力的に見えてしまうのです。
子ども番組のスポンサーに、インスタント食品やスナック菓子、ジュースメーカーの何と多いことか。
13.![]()
夜尿があると身長が伸び悩むことがよくあります。
まず、どういうタイプの夜尿かを判定して、それにあった対策を立てましょう。
まず、台所用の計測カップを手に入れて、尿量を計ってみて下さい。
夜尿の量は、オシメをしている子は、オシメが何g重くなったかで判断してもいいです。
夜尿の原因分類
(1)多尿型夜尿症
尿量が多いためにおこる夜尿です。
昼間の尿量が正常でも夜間睡眠時尿量が5ml/kg(体重1kgあたり5ml上)の場合も多尿型夜尿症と分類されます。
夜間睡眠時尿量=[夜尿の量]+[朝1番尿の量]です。
5ml/kg以上とは、20kgのお子さんの場合100ml以上、30kgのお子さんの場合150ml以上となります。
体重にかかわらず、夜間睡眠時尿量が250mlを超える場合は、典型的な多尿型夜尿症です。
(2)膀胱型夜尿症
機能的膀胱(ぼうこう)容量(尿を我慢して最大限膀胱に尿を貯めた時の尿量)が体重1kgあたり7ml以下の場合です。
つまり、体重が20kgのお子さんの場合140ml以下、30kgのお子さんの場合210ml以下の場合が膀胱型夜尿症です。
実際に膀胱の容積が小さい場合と、膀胱自体は小さくないが十分に尿を貯めることができずもれてしまう場合があります。
(3)未熟型夜尿症
排尿機能が未熟なための夜尿です。
夜間睡眠時尿量は多くなく、また機能的膀胱容量も小さくないのに夜尿が続く場合は、
排尿機能が未熟(赤ちゃんのように、尿がたまるとすぐに出てしまう)なための夜尿の可能性があります。
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★主として多尿型夜尿症を治すためのトレーニング
★主として膀胱型夜尿症を治すためのトレーニング
- 水分摂取コントロールと塩分の制限---お子さんの自主性にまかせて、無理のない範囲で行ってください。
- 1.水分は午前中に十分とらせます。今までより多めに飲んでもかまいません。
昼食の時も、水分は特別制限しません。
- 2.午後、昼食後からは、あまり水分はとらないようにし、
のどが渇いても一回に飲む水分は150ml以内にとどめます。
- 3.夕方4時以降は、なるべく水分を取らないようにし、夕食は早めにすませるようにします。
夕食の時の水分はお茶150ml程度にします。
汁物はひかえ、特に、牛乳、みそしる、フルーツはひかえめにし、午前中にとらせるようにします。
風呂上がりにのどが渇く場合は、うがいをしたり、氷を口にふくんだりして、のどを潤すようにして下さい。
- 排尿抑制訓練
- 排尿を抑制し体重×7ml以上の尿(たとえば、体重が20kgなら140ml)を
膀胱内にためる訓練をおこなう。
具体的な方法は、1日1回(学校から帰宅後が良いでしょう)、尿を我慢して、膀胱内に最大限、尿を貯めます。
これを繰り返していると、しだいに、膀胱に尿が多く貯まるようになってきます。
何ml貯まるか記録をつけておきましょう。
腎疾患がある場合はこの訓練は絶対にしてはならないので医師の指導のもとに行ってください。
(膀胱型夜尿症以外のお子さんでも、この方法はある程度有効です。)
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近年、食物アレルギーのお子さんが増えています。
特に、牛乳アレルギーがある場合は、身長を伸ばすためには工夫が必要です。
(1)除去食は素人判断で決しておこなってはいけません
最近、アトピー性皮膚炎、イコール食物アレルギーと短絡的に考えて、
食物が原因でないのに、いわゆる除去食をおこなっているお母さんをよく見かけます。
医者のなかにもそのように考えている人がいるのは困ったものです。
アトピー性皮膚炎の一部には食物が原因になっているものがありますが、すべてではありません。
こどもの発育に重要な食品を安易に除去してはいけません。
(2)まず第一に本当に食物アレルギーがあるかどうかはっきりさせる
食物アレルギーが疑われる場合は必ず専門の医師の診察を受けて、
本当に食物がアレルギーをおこしているのかどうかはっきりさせることが重要です。
(3)除去するのは簡単だが、代わりに何を食べるかは難しい
除去する必要があると判断された場合は、代わりに何を食べるかが重要になります。
(4)牛乳アレルギーの場合
牛乳は良質の蛋白質とカルシウムを含んでいます。蛋白質は、肉、魚、豆類などで補いましょう。
カルシウムは、小魚に豊富に含まれますが、
小魚は嫌いな子どもが多いので、小魚だけではなかなか補えません。
野菜では、小松菜にカルシウムが豊富ですが、こまつなも子どもには、不人気です。
そこで、お母さんの料理の腕の見せどころです。
子どもの好むお好み焼きに入れたり、みじん切りにしたものをカレーライスに混ぜたりするのもよいでしょう。
大豆製品やごまにもカルシウムは豊富です。