方法2
早熟を防ぎ、成長線閉鎖を遅らせる


欧米人が日本人と比べてなぜ身長が高いか。
ズバリその答えは、欧米人の方が、大人になるのが遅く、
その結果、身長の伸びが止まるのが遅いからです。
中学生までは、日本人と欧米人の身長の差はあまりありません。

ところが、高校生になると日本人はほとんど伸びませんが、欧米人はまだまだ伸び続けます。
日本人の女子は、先進国の中では最も早く初潮を迎えます。
生理があるとその後身長は6cm程度しか伸びません。
早すぎる思春期を防ぐのにはどうすればよいかを述べます。



1.早熟な子は早く伸びが止まる

日本人は、早熟を喜ぶ傾向があります。
しかし、体が早く成熟し成人になるということは、早く身長の伸びが止ってしまうということなのです。
これは、当然のことなのです。女子では、初潮を迎えると、その後は約6cm程度しか伸びません。
男子でも、声変わりすると、その後は、あまり伸びません。
思春期の身長の伸びは、めざましく、身長増加のスパートと呼ばれています。
しかし、この身長増加のスパートは、身長増加がゴールに達す直前のラストスパートを意味しますので、
もうすぐ身長が伸びなくなる前ぶれなのです。
思春期のスパートを迎えるまでに、いくら身長が伸びたかが、
成人に達した時点での身長の高い低いを決定するのです。

下の図は、身長別の初潮年齢を示したものです。
身長が150cm以下の女性は11歳半には初潮を迎えていますが、
身長165cm以上になった女性の初潮年齢は、12歳を越えています。
思春期が遅かった人の方が身長が高くなるのです。
思春期が早かった人は、十分に身長が伸びないまま成人の体となり、
骨が固まってもはや身長は伸びなくなり、最終的に身長が低くなってしまうのです。



0201.gif





2.大切なのは思春期までにいくら伸びるか

 思春期に身長が良く伸びることは、みなさんもよく御存じと思います。
お父さん、お母さん、思い出してみて下さい。
ちょうど思春期の頃、あっという間に制服が体に合わなくなったり、よく背が伸びませんでしたか。
しかし、この思春期の伸びには、あまり個人差がないのです。
つまり、思春期の間は誰でもよく身長が伸びるのです。
成人に達した時の身長の差となるのは、思春期の伸びではなく、思春期以前の伸びなのです。
早めに思春期を迎えてしまうと、小児期が短くなってしまい、
結果的に身長が伸びる期間が短くなり、
十分に身長が伸びずに成人に達してしまいます。


「子ども」である期間  =  「成長」出来る期間


0201.gif


3.意外に早熟すぎる日本人の子こども

あまり知られていませんが、日本人の子どもは、世界で最も早熟です。
欧米人の方がオマセなような印象がありますが、実は日本人の子どもの方がずっとオマセなのです。
この原因はよく分かっていませんが、日本人の子どもは欧米人の子どもよりも、早く大人になってしまい、
その結果、早く身長の伸びが止まってしまうのです。
私達が、男性の精通(初めての射精)年令を1970年代生まれの男性について調査したところ、
平均が12歳10カ月でした。これは、欧米の男性と比べて1年程度、早いことが分かりました。


男性の精通年令
日本 ドイツ デンマーク アメリカ
12才10ヶ月 14才1ヶ月 13才5ヶ月 14才


日本人の初潮年令は12才6か月ですが、
これは先進国の中では最も早く、欧米の子供より約6か月早くなっています。
この6か月の差が、欧米との身長差の1つの原因になっています。



4.日本人の子どもは早熟なため身長増加が早く止まる

日本人の子どもの平均的な成長曲線と、アメリカ人の子どもの平均的な成長曲線を比較すると、
日本人は早熟で早く身長の伸びが止まってしまうことがわかります。
中学1年生どうしを比較しますと、日本人とアメリカ人の身長は、ほとんど同じです。
ところが、日本人は、高校に入ってからは、ほとんど伸びません。
日本人の子どもは、早熟なため、アメリカの子どもより早く骨が固まり、
大人の体になってしまい、15歳以降はほとんど伸びません。
これに対して、アメリカの子どもは、まだ大人の体になっておらず身長は伸び続けるのです。



5.思春期の早い、遅いは何で決まるか

思春期の発来は、遺伝や自然環境の影響を受けますし、人種による違いもあるようなので、
発来の時期を人為的に遅らせることは、なかなか難しいようです。
しかし、思春期発来の時期はある程度はコントロール可能です。
栄養の取り過ぎは、明らかに思春期の発来を早めますし、家庭環境や、社会環境も影響するようです。

また、最近では、環境ホルモンの影響も取りざたされています。
思春期が早いということは、早く親離れしてしまうということでもあります。
思春期の早い子は、あっという間に反抗期になってしまい、
親としてもそれに対処する時間的余裕がないため、育てにくいという側面もあります。



0501.gif




6.こどもの性成熟を知っておく(男子)

男子の性成熟は睾丸を見るとよくわかります。
睾丸が“うずらのタマゴ”位の大きさになったら、
もう思春期です。睾丸は、うずらのタマゴ(8〜10ml )より、長細く、まん丸ではありません。
お父さん、お子さんと一緒にお風呂に入ったら、我が子の“発育”を確かめて見て下さい。
なお、左右の大きさは少し違います。


0601.jpg


下に、睾丸の大きさの模型を示しました。







7. 太っている子の背の伸び方

Image22-1.gif 小学校低学年

太っている子は、はじめは背も高いのですが・・・
Image22-2.gif 小学校高学年

太った子は初潮を早く迎えるため、
背の伸びも早く止まってきます。
Image22-3.gif 中学校3年生

中学校に入ってからの背の伸びは少なく、
みんなに追い抜かれてしまいます。




8.夫婦ゲンカは、こどもの早熟化を招く

しょっちゅう夫婦ゲンカをしていると、子どもは情緒不安定になり、成長ホルモンの分泌が悪くなります。
また、両親が争っている姿を見ていると、子どもは身の危険を感じ、本能的に早く大人になろうとします。
早く大人になると、早く骨が固まってしまい、身長は伸びなくなります。
成長ホルモンの研究の第一人者の鎮目和夫博士も“両親が夫婦ゲンカばかりしていると、
子どもの身長は伸びなくなる”と言われています。





家庭環境と初潮年齢

思春期の発来は環境に影響される(Belskyらの説)

両親が離婚した場合、平均して初潮は約6ヶ月早い
両親が不仲の場合も統計的に優位に初潮が早い

 両親の争い 
 子どもは身の危険を感じる 
 本能的に早く大人になろうとする 


9.子どもらしく“のびのび”と

子どもらしく、”のびのび”と、”いきいき”と生活する事は、
身長を伸ばすためには、とても大切なことです。
しかし、現代に生きる子ども達にとっては、知識や教養を身に付けることも、必要でしょう。
したがって、勉強や習い事と遊びのバランスが大切になってきます。
ストレスの多すぎる生活は、子どもの発育を妨げますが、
逆に、まったくストレスのない生活も、子どもを、ダメにしてしまいます。
要するに、どこでバランスを取るかを、親は判断しなければならないのです。
どの程度のストレスなら、子どもに有害でないのかの判定をしなければならないのです。
そのためには、子どもとの接触時間を長くとり、子どもをよく観察することが、大事に
なってきます。大切なお子さんに、もっともっと目を向けてあげてください。
home      back